技能ビザは、日本経済の国際化の進展に対応し、熟練技能労働者を外国から受け入れるために設けられた在留資格で、外国料理の調理師・料理人、スポーツ指導者、航空機のパイロット、貴金属等の加工職人等が該当します。
中でも最も多いのが、各国の専門料理店に勤務する外国人調理師です。具体的には中華料理専門店、タイ料理専門店、ベトナム料理専門店、インドネパール料理専門店、韓国料理専門店などで勤務する外国人調理師が対象です。
技能ビザの在留期間は、5年、3年、1年又は3月です。
技能ビザ(外国人調理師・コックの場合)が認められるためのポイント
当該専門料理店での実務経験が10年以上あること
外国の教育機関で調理や食品製造に関する科目を専攻した期間を含みます。
タイ料理人のみ5年以上の実務経験で取得できます。
実務経験について
技能ビザの取得のためには実務経験の証明が必要であり、申請書や経歴書に10年と記載するだけでは許可されません。申請書に10年と記載した上で、それを立証する必要があります。そして立証責任は本人にあります。具体的には過去の勤務先から「在職証明書」を取得し、場合によっては在職証明書を外国で公正証書にして入国管理局に提出します。 在職証明書には会社名(店名)、電話番号、住所、職種、実務経験年数が記載されている必要があります。
過去の勤務先が現存していない場合は在職証明書を取ることができませんので、実際に勤務していた経験が過去にあったとしても、実務経験として扱われることは非常に難しくなります。
海外から招へいする場合
技能ビザの許可要件は、原則として実務経験10年以上(タイ料理人のみ5年以上)が必要で、この実務経験は日本で積むことはできません。調理専門学校を卒業した新卒外国人は、この実務経験年数要件を満たすことはできませんので、調理師として日本で働くことはできません。なので新規に技能ビザを取得するのは、そのほとんどが海外からの招へいです。この場合に必要な手続きが「在留資格認定証明書交付申請」です。
転職者を採用する場合
技能ビザは取得要件として10年以上の実務経験が必要ですから、新卒者ではほとんどのケースで取得できません。そのような事情によって外国人のコックを採用するには、海外から実務経験者を招へいするか、すでに日本国内で働いているコックを中途採用するしか方法がありません。転職した場合は「所属機関に関する届出手続」が必要です。
ご本人の在留期限がまだ十分に残っている場合は「就労資格証明書交付申請」をします。現在所持している技能ビザは前職の会社(店舗)で働くという前提で出ているものです。ですから転職した会社(店舗)で働くことができることを証明する必要があるのです。
在留期限がほとんど残っていない場合には、「就労資格証明書交付申請」をせずに、更新申請の際に転職後の会社情報を提出し許可をもらいます。
外国料理店の経営者の場合
外国料理店の経営者は「経営管理」ビザを取得します。経営者は原則としては調理業務や接客業務には従事できません。
フロアで働くホール係や調理補助の場合
原則「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザは取得できません。留学生や家族滞在の方が「資格外活動許可」を得て週28時間以内で働くことができます。
永住者・帰化者・定住者・日本人の配偶者等はそのままで日本人と同様に働けます。
技能ビザの転職について
技能ビザを持っている外国人コックが、別の店舗へ転職することは可能です。たとえば、中国人調理師が別の中華料理店に転職することは可能ですが、イタリア料理店に転職することはできません。さらにコンビニや貿易会社など全然違う業種の会社へ転職することもビザを考えれば現実的にはできません。
技能ビザをもっている外国人コックが転職した場合の手続きとしては、まず14日以内に「契約機関に関する届出手続」を入国管理局に対し行う必要があります。この手続きは必須で、届出を怠ると次回のビザ更新を審査する上で非常に不利です。
さらに、現在取得している技能ビザは「前職の会社で調理師として働くことを前提」に許可されているものですから、転職後の会社に所属して働けるわけではありません。ですので、転職後の会社でも働けることを証明するために「就労資格証明書交付申請」を行います。これによって許可されれば転職後の会社(店舗)でも働けます。
技能ビザの要件
- 料理の調理または食品の製造に係る技能で外国において考案され、我が国において特殊なものについて10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該料理の調理または食品の製造にかかる科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
- 外国に特有の建築または土木に係る技能について10年(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指導監督を受けて従事する者の場合に あっては5年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築または土木に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
- 外国に特有の製品の製造または修理に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該製品の製造または修理に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
- 宝石、貴金属または毛皮の加工に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
- 動物の調教にかかる技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
- 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削または海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削または海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
- 航空機の操縦に係る技能について1000時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法第2条第17項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの
- スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間および報酬を受けて当該スポーツ に従事していた期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの、または、スポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の 国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの
- ぶどう酒の品質の鑑定、評価および保持ならびにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という)に係る技能について5年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む)を有する次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
① ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という)において優秀な成績を収めたことがある者
② 国際ソムリエコンクール(出場者が1国につき1名に制限されているものに限る)に出場したことがある者
③ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む)もしくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む)またはこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者
上記どれか1つの要件を満たし、かつ給料が日本人と同等以上であればビザ要件を満たします。